前回この曲は歌詞もメロディも起承転結パターンに則って作られていると書きました。今回はそこをもう少し掘り下げてみます。

まず歌詞から。この曲ちょっと聴いただけだと美しいメロディなので中学生が合唱コンクールで歌ってもよいように思えたりしますが、まずそうはならないでしょう。なぜなら歌詞の内容が大人向けだから。はっきり言うと結構にエロいのです。 

   坂本冬美さん『また君に恋してる』の歌詞

まずタイトルが”?”と思わせる上手いつけ方ですね。旦那に惚れ直した歌かな?とかいろいろ想像させられます。

Aメロ(起)、朝の光の中でパートナーの頬に触れるシーン、”初めてのように”とあることで実は初めてではないことを示しています。

A'メロ(承)、ここに”君の寝息”と出てくることで、この場所が2人で朝を迎えたベッドの上であり、まだ眠っているパートナーの頬に触れていることが判明します。しかもその相手とは以前にそういった関係があり、当人は時を隔ててまたこの状況にあることを”報われる”と感じているのです。

ここまでたったの4行の状況説明でこれだけの物語を表現しているのですから、さすが大御所松井五郎氏ですね。

Bメロ(転)、ここで一転場面が変わるかのように、これまでの状況説明から自然の描写のような歌詞になっています。もちろんこれは単なる自然描写ではなく、それになぞらえて一度別れた2人が再び一緒になったことを暗示しているのです。

そしてサビ(結)、タイトルがドーンと出てきて”ああ、そういうことだったのか”というカタルシス(=スッキリ感、かな?)、そしてその想いは以前より”深く””心から”のものである、ということで結んでいます。

いかがでしたでしょうか。歌謡曲の歌詞でもこんな巧みな表現をしているものもあるのです。奥が深いですね。歌詞だけで一杯になってしまったので、歌い方については次回にまた。

歌屋ボーカルスクール
♪Singing songs changes your world.