前回は歌詞の内容からこの曲の起承転結構成を確認しました。今回はその構成に則った歌い方を考えてみましょう。

Aメロ(起)、まず出だしはニュートラルでかつこれから何かが始まる予感を感じさせるように歌い出します。イントロでイメージを作っておき、第一声で聴き手をフッとその世界に誘うようなスタートです。このファーストコンタクトでその曲のイメージがほぼ決まってしまいますので、とても重要です。しっかり集中して歌い始めます。

A'メロ(承)、Aメロを受けて基本的には同じテンションで歌っていきます。最後の”報われる”のところはやや強めになっていますが、これはBメロに向け盛り上がっていくイメージです。またここはこの曲最初の心理描写ですので、少し気持ちを乗せていきます。

Bメロ(転)、メロディが一転してロングトーンが用いられ、A,A'よりややテンションが高くなります。ロングトーンがふらつかないよう、腹式で支えてしっかりと歌います。

サビ(結)、この曲の核心部分です。タイトルの”また君にー”を気持ちを乗せ(但し過剰にならぬよう!)遠くに歌いかけます。”恋してる”で一旦落とし、再度盛り上がっていって、”また君をー”に続いていきます。

ちなみに坂本冬美はこのサビの最初”君にー”の”にー”を低い音と高い音の2つを使って歌っています。これは”しゃくり”と呼ばれる歌唱法で、最近はカラオケの採点項目になっていたりもするのでご存知の方も多いと思います。

”しゃくり”は低い音から高い音へ一気にしゃくり上げるように歌うものですが、ここでの坂本冬美は低い音は地声、高い音は裏声で歌うという高等テクニックを用いています。さすが忌野清志郎が惚れ込んでユニットを組むに至った歌唱力ですね。

更に繰り返しの”また君をー”ではこの”しゃくり”を使わずほぼストレートに歌っています。これは非常に大切なことで、どんなに優れたテクニックも繰り返されるとくどくなり、”過ぎたるは及ばざるが如し”状態になってしまうのです。

また一般に歌手やプレイヤーは同じフレーズを何度も繰り返すことを嫌い、1,2番で歌い方やメロディを変えたりすることもよく行われています。

それでは上記を見ながらもう一度この曲を聴いてみましょう。上記したことが実際にどう歌われているのかを確認していただくと、改めてこの曲の完成度の高さと坂本冬美の歌唱力に圧倒されることでしょう。

歌屋ボーカルスクール
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