昨年来日し東京ドーム他日本各地でライブ・パフォーマンスを観せたポール、歌屋の周りでも結構行ってる人がいて皆一様に”すごかった。70歳を超えているとはとても信じられない”と言ってました。本当にすごいですね。


さてそんなポール師匠の歌い方の特徴を上げてみます。まずは見た目から。

1. 口は縦に大きめに開く
2. 首から上はほぼ脱力状態
3. 頭を斜めに軽く振る(首振り人形?のように)
4. 視線はやや上目遣いで左右にさまよう感じ

時代や曲目、状況によっても異なりますが、こんなイメージではないでしょうか。ここでやはり特徴的なのは”力が抜けている”ことですね。

"Yesterday"のようなソフトバラードはもちろん、けっこうに激しい曲でも余裕の表情だったりします。これは多くのハードロック系ボーカルがシャウトで苦悶の表情を浮かべるのと対象的です(演出はあるにしても)。



そして実際の発声、バラードの際の極めて柔らかい声から"Helter Skelter""Oh! Darling"のような激しいシャウトまで、自在に発声の仕方を使い分けています。

以前ラジオで桑田佳祐がリスナーからの”桑田さんはポール派ですか、ジョン派ですか?”との質問に次のような回答をしていました。※記憶ベースなのであいまいです。

”ジョンの曲しかカバーしないが、実はポール派。ポールの声は日本人には出せない。あれは喉にEQが付いている。”

EQ=イコライザーというのは音質を変化させる装置です。つまり曲によってEQで声質を変化させているということですね。さすが桑田佳祐、上手い喩えをします。



さらにポールの声の特徴は、基本的に”胸声”であること。胸声についてはこちらの以前の記事をご覧ください。

胸声の特徴は”太く、甘い”ことですので、バラードにはピッタリ、まさにこちらの胸に響いてくる歌声です。そしてポールの場合激しい曲でのシャウトの発声もこの胸声を押し上げて出しているイメージになります。

これは少々やっかいで、当ブログでは一貫して”胸声を押し上げて高音を出すのはNG、中声・頭声に切り替える”ことを推奨してきました。”あれあれ、言ってることが矛盾してるんじゃないの”。。。

いえいえ、あくまでもオススメは”高音は頭声に切り替えて出す”です。ではポールの場合は?答え、”プロだからOK。なんでもあり”

例えば格闘家をイメージしてみてください。彼らのやってることで身体にいいことは一つもないですが、だからといって”それ身体に悪いからやめた方がいいですよ”って言わないですよね。おそらくぶっ飛ばされます。プロは覚悟を決めて、命を削って普通の人ができないことをしているのです。それがプロなのです。

ポールは言わずと知れたプロ中のプロ、オリジナル・キーのままオーディエンスのために身体を張って歌います。実はライブの"Helter Skelter"は出だしメロを少し変えてビートルズ時代の最高音より低くしていたりしますが、これはポールの価値を1mmも落とすものではありません。70を過ぎ遠い国まできて数万人が注目するステージに立ち、重い楽器をかかえ3時間に及び期待を超えるパフォーマンスを魅せる、これは奇跡以外のなにものでもありません。

うーん、後半熱くなって字数が急に増えてしまい失礼しました。。。ポールの追加公演今月ですね。行かれる方、どうぞ楽しんできてください。うらやましー。

歌屋ボーカルスクール 
♪Singing songs changes your world.